「え、ここって……」

海月を気遣いながらたどり着いた場所は、学校だった。


俺は慣れたように校門の柵を上手くすり抜けて敷地内へと入る。海月は戸惑っていたけれど、「大丈夫だよ」と声をかけると、同じように中に入ってきた。


校舎はもちろんどこも施錠されているし、無理やりこじ開ければセキュリティシステムが鳴って大変なことになる。でも、一ヶ所だけ手薄な場所があることを俺は知っていた。


……ガラッ。

予想どおり、一階にある生物準備室の三番目の窓が開いた。


前に誰かが壊してしまった鍵が直されずにそのままにされていて、過去に一度だけ沢木たちと肝試しをしに校舎へと侵入したことがあったのだ。

でも入った瞬間に何故か壁にかけられていた生き物の標本がガタッと落ちて、結局ビビってすぐに帰ったんだけど。

  
窓を乗り越えて海月と中に入り履いていた靴を脱ぐ。今回は標本が落下してくることはなかった。

荷物になるからと靴は床に置いておくことにして、俺が念のために開けた窓を閉めている間、海月は怖がるどころか棚にあるホルマリン漬けをじっと見ていた。