そして時間が過ぎて、俺は海月を迎えにいくために友達と別れた。


夜の駅前はすっかり大人の街になっていて、キラキラと光るネオンや飲食店に出入りしてるサラリーマンが目立つ。そんな光景を横目に、俺は海月の元へと急いだ。


海月のバイト先はなんとなく予想できていたけど、間違っている可能性もあったので事前に三鶴に連絡して聞いておいた。


蕎麦屋の看板はきらびやかに宣伝していた駅前の飲食店とは違いとてもレトロな装いだった。

多分ここに蕎麦屋があることを知らない人のほうが多そうだし、知る人ぞ知る穴場のような雰囲気だ。


「気をつけてね、海月ちゃん」

「お疲れさまでした」


俺が店の前に到着すると、タイミングよく入り口の引き戸が開いて、中から海月が出てきた。


「あ……」


声を出したのは海月のほう。迎えにいくと言っておいたけれど、まさか本当にいるなんて、という驚いた顔をしていた。



「あら、もしかして海月ちゃんの彼氏?」

年配の女性が俺のことに気づいて微笑む。おそらく割烹着を着ているからこの店の人だろう。


「ち、違います」

俺が声を出す前に海月は首を横に振った。そして、詳しく聞かれる前に「失礼します……」と、女性に頭を下げて歩きだす。

俺も続けるように会釈をしたあと、そのまま海月を追いかけるように店を離れた。