「ふたりがいとこだってこと絶対誰にも言うなってきつく口止めされたよ」
「あっちも色々とバレると困るからでしょ」
「ちげーよ。あいつは自分のことじゃなくて、お前に迷惑かけるから誰にも言うなって言ってきたんだよ」
今だってそうだ。
病気のことだって、打ち明ければ周りの負担になるからと、海月はいつも自分のことを優先してくれない。
「どうせあの子から色々聞いてるんでしょ。私の家族と上手くいってないことも」
「海月は家族じゃねーのかよ」
「……家族の中にいるってだけよ」
「そんな考えだからあいつは……」
「そういう考えにしてるのは海月だから!」
岸はスイッチが入ったように怖い顔をした。
「あの子の親が勝手にいなくなって、私たちだって色々と戸惑ったの。それでも海月に責任はないからって、施設には預けずにうちで預かることを決めた。みんなあの子のことを一から知っていこうって歩み寄った。でも、海月は全然心を開いてくれなかった」
「………」
「甘えない、頼らない。だから迷惑はかけませんって目をするだけ。そんな風に距離を置かれたら私たちだって、あの子に多少きつくもなるでしょ」
海月はきっと母親に愛されなかったことで、ずっと自分が悪いんじゃないかって思い続けてきた。
こうして岸の家族の中に自分がぽつりといることも悪いと思ってるし、家にいさせてもらえてるだけで十分だと思ってる。
だから、それ以上は求めないし、いらないと考えているんだと思う。
海月なりの、気の使い方。両方の複雑な気持ちは理解できる。
でも間違っているのは……もしかしたら海月のほうかもしれない。