バッティングセンターに着くと、すでに見慣れた顔が集まっていた。
「あ、悠真きた!」
「今日来ないって言ってなかった?」
ぞろぞろと俺を見るなりみんなが声をかけてきた。10人はいる集団の中で、岸は二組の女子とスマホを片手に話していた。
岸と一瞬だけ目が合ったけれど、以前のように『佐原くーん』と寄ってきたりはしない。むしろ俺がふたりの関係を知ってからは、岸のほうから近づかないようにしてる気がする。
そのあとみんなは混まない内に6打席あるバッティングルームに入っていき、順番待ちをしながら遊びはじめた。
ここはプロ仕様の硬式用マシンから軟式、変化球と様々なプレイを選ぶことができて、200円で20球と値段も安い。
一度入ったらなかなか出てこないのがいつものパターンだし、タイミングは今しかないと俺は岸をルームの外にあるベンチへと呼び出した。
「で、なに?」
男子からは可愛い岸さん、なんて言われてるのに俺の前で猫を被る必要がなくなったからなのか岸はすごく無愛想だった。
気だるそうに足を組み、先ほど岸に好意を寄せてるヤツから買わせた自販の粒入りコーンポタージュを飲んでいた。
「お前と海月の顔って、見れば見るほど似てないな」
岸の顔なんて今までまじまじと見たことなんてなかったけど、海月と血の繋がりがあると知った今はつい共通点を探してしまう。
でも、本当に重なるところが全然ないから、同じ名字でもみんなが疑わない理由が分かる。
「当たり前でしょ。ただのいとこなんだし」
「でも俺のいとこたちはみんな顔似てるよ」
「だからなんなの?そんなことを私に聞きたいわけじゃないんでしょ」
いきなり海月との家庭内事情を尋ねるのはダメかと思って雑談から入ろうとしたのに、どうやら遠回しな聞き方が勘に触ってしまったようだ。