「お、佐原じゃん」
海月と別れた帰り道。俺は同級生の友達に会った。向かってる方向からしていつものバッティングセンターに行くんだろう。
そういえば今日『遊びにいこうぜ』と誘われたけど、海月の病院のこともあって断っていた。
「あれ、用があるって言ってなかったっけ?」
「用あったよ。今その帰り道」
「まじか。じゃあ、暇じゃん!一緒に行こうぜ」
「いや、パス。そんな気分じゃない」
海月のことを迎えに行くまではたしかに時間をもて余すけど、だからってバイトを頑張ってやってる海月とは反対に遊んで暇を潰すのは違う気がする。
「パスとかないから。昨日も先に帰ったし、最近付き合い悪いんだから来いよ!」
「だから、行かねーって」
「今日は一組の女子も来るからさ。俺密かに狙ってんだよね。美波ちゃん」
その言葉に俺はぴくりと反応した。
……岸美波がくる。
正直前から岸のことは苦手だけど、海月の家庭事情のことは気がかりだし、岸となにか話せることがあるんじゃないかと思い、俺は少しだけ顔を出すことにした。