海月は色々なものを背負いすぎていて、その細い身体では支えきれないほどに。
海月が戦ってる人でも、俺は戦わせたくない。すれ違う女子高生と同じようになんにも考えずに笑っていてほしいだけなのに、なんでこんなに海月だけ……。
「じゃ、私こっちだから」
分かれ道に差し掛かり、海月は蕎麦屋がある方向へと向かっていく。今日は海月の背中を見送ってばっかり。
「海月……!」
俺は声を出した。
「バイト、終わるの何時?」
俺の不安なんて、海月は最初から察してる。
海月以上に怖がってることも現実逃避したいことも、ふいに見せてしまう暗い顔も、海月はぜんぶ、気づいてる。
だから逃げていいと言った。
俺のために、言った。
「迎えにいく。何時?」
でも、やっぱり俺は逃げたくない。
きみが戦う人なら、俺も戦う人になる。
「10時」
海月の瞳が一瞬潤んで見えたのは、俺の吹っ切れたような決意が伝わったからなのかもしれない。