そして放課後。俺は海月と電車で隣町にある大学病院へと向かった。病院は三棟の建物が並んでいて俺が想像してたよりもでかかった。
院内には29個の診療科があり、その他にもセンター・部門が49施設あると入り口の案内に書いてある。
海月は慣れた様子で受付を済ませてエレベーターの前へ。
ちょうど点滴台を押した人が一緒に乗ってきて、きっとここの入院患者なのだろう。薄い青色の検査衣を着て裸足に白いスリッパを履いていた。
その人の邪魔にならないように端に寄る海月も、「何階ですか?」とボタンを押してあげる姿もやっぱり慣れていて、ひとりでここに通っていたんだと思うと胸が詰まる思いがした。
俺たちは五階で下りた。
海月の後についていくように進み、待ち合い室が見えてくると、そこには脳神経外科の文字。
ドキッとした。
以前目撃した女子から言われた時は海月が病気だなんて信じてなかったし、なるべく怖い想像はしないようにしてた。でも実際にこの文字を目にすると、心臓の鼓動が自然に速くなる。
「あんまり病院っていい心地がしないでしょ」
海月は焦げ茶色の腰掛けに座った。
「いつもここで待ってんの?」
「うん。でも今日は混んでないからすぐに名前呼ばれるよ」
俺も海月の隣に腰を下ろしたところで、廊下からカルテを持った白衣の人がこっちに向かって歩いてきた。
白髪混じりの男性はおそらく50代ぐらい。その人と海月の目が合うと、海月のほうが先に頭を下げて向こうも応えるように会釈する。
その人はそのまま俺たちの前を通りすぎて、脳神経外科の診療室へと入っていった。