「サプリメントだって嘘ついてごめん」
あの時はよく確認できなかったけど、種類の違う薬が全部で五種類あった。
「これを飲んでるからって腫瘍が小さくなるわけじゃなくて、ほとんど症状を和らげるための痛み止め。止めるっていうか、痛みを散らしてるって言ったほうがいいかも」
「……よく見てもいい?」
「うん」
薬を手のひらに乗せると見た目は市販の風邪薬と変わらなかったけれど、副作用が強いものもあると思う。
「病気のこと、岸は知らないの?」
「うん。美波の家族にも話してない」
「話さなくて……いいの?」
「ただでさえ迷惑かけてるから」
薬代などはバイトで貰ってる給料で払っているみたいだし、海月は話さないというより、頼りたくないように見えた。
海月の家庭事情は理解してる。海月の性格からして、最後の最後まで隠し通したいということも。
でも、本当にそれでいいんだろうか。
自分を置いていった母親のことも、預けられてる岸の家族とのことも、なんにも解決しないままでいてほしくないけど、海月の気持ちを無理に強制はしたくない。
「今日、バイトは?」
「ある。でも定期検診の日だから病院に寄ってからいくよ」
それは多分、以前人づてに聞いた隣町の大学病院だと思う。
「……俺も行っていい?」
「え?」
海月が通ってる病院や雰囲気を自分の目で確かめておきたい。海月は「いいけど待ってる間は暇だよ」と、気遣ってきたけど俺はそれでも一緒に行くと言った。