そして午前の授業が終わって昼休み。俺は海月にメッセージを送って第三音楽室に呼び出した。
ガラッとドアを開けると、すでに海月が待っていてくれた。
「ごめん。ちょっと遅くなって」
俺の両腕には抱えきれないほどのパン。実は先ほど食堂前のワゴンで売ってるパンを大量に買い占めてきたのだ。
「そんなに食べるの?」
海月がそれを見てきょとんとしてる。俺は音楽室にある机の上にすべてのパンを置いて、海月を自分の隣に座らせた。
「一緒に食べようよ」
海月に選んでほしくて、惣菜パンから菓子パンまでありとあらゆるパンを買ってきた。
海月の病気の症状のひとつに食欲不振があって、海月が細いことも少食な理由も分かった。正直俺も今はあまりガツガツ食べられる気分ではないし、海月のことを考えるとちっとも腹が空かない。
でも、俺まで気分が沈んでマイナスなことばかりを考えるのは違うなって。
海月が元気がない時こそ俺が元気でいなくちゃいけない気がするし、食べることは生きることだから、少しでも身体に食べ物を入れてほしい。
そんな俺の気持ちを察したように、海月は「じゃあ、これ」とパンを選んだ。それは小さなメロンパンだった。