「おはよう、悠真」
「ってかなんで昨日慌てて帰ったんだよ?」
学校に着くと、いつも釣るんでいる友達が机の周りに集まってきた。自然と騒がしくなる空間で、俺はぽつりと浮いたまま。
ここにいる誰もが病気や死を意識して過ごしてる人はいなくて、ごく普通の16歳の高校生活を謳歌してる。
だけど、海月はきっとそういう普通の人しかいない場所で、病気の自分を隠しながら生活していたんだと思うと、胸が苦しくて痛くなった。
そんな中で、頭の中でずっと消えないあの時の会話。
――『瓶を振っても逆さにしてもクラゲはどこにもいなくて、まるでいたのが夢みたいで。もし、自分が死ぬ時が来たらこんな風になりたいなって。身体が溶けて水になって、それで叶うなら海として漂いたい。あれからずいぶん時間が経ったけど、その気持ちは変わってない気がする』
なんでそんなことを言うんだろうって思ったけど、今なら分かる。
海月は覚悟してるんだ。
自分が死ぬということ。命が残り少ないこと。
自分がこの世界から消えてしまうことを。