嘘だと、心で思いながらも感情を出すのが下手くそなきみが震えて打ち明けてくれたことを、嘘だとは思えなくて。


ただただ弱さをさらけ出してくれたきみを抱きしめて、「大丈夫。傍にいるから」と繰り返し言ったけれど……。


本当は、俺のほうが泣き崩れてしまいそうだった。




その日の夜、俺は一睡も眠ることができなかった。

なにかあるんじゃないかと思っていたことが、俺の想像するよりもずっと深刻で。海月が途切れ途切れに教えてくれた病気を、俺はひたすらスマホで調べた。



〝脳腫瘍〟


病名はもちろん聞いたことがあるし、なんとなく重そうな病気だなというテレビドラマなどで見た知識しか俺の中にはなくて。調べて、調べて、調べた結果、今までの海月の体調不良と怖いくらい重なった。



海月の腫瘍は深くて到達困難な場所にあり、発見した時にはグレート4だと説明されたらしい。

それは手術、放射線、制がん剤を使っても治る確率は限りなく低くて、宣告された患者は治療をしない緩和ケアだけをして残りの期間を過ごすそうだ。



私はもう長くないと、言った海月。

そして余命三か月と言われたことも、冬を越すことができないことも、海月はバカな俺でも分かるように教えてくれた。


こんなにも血の気が引いていく感覚は初めてで、ずっと心臓がバクバクしてる。



……海月が、死ぬ……?


そんなことあるわけないと頭で繰り返しても朝日は昇る。


海月の余命が1日ずつ削られていく朝空は、無情にも綺麗な青だった。