借りてきた猫のようにソファーに座ってる私と、リビングの扉の前で立ち尽くしている三鶴くん。

目が合ってお互いになんとなく状況を把握しながらも、三鶴くんはこっそりと私のほうに来た。


「母さんに強引に連れてこられたんですか?すいません」


佐原のお母さんを『母さん』と呼んでいるということは、必然的に、いや、そうじゃなくても色々なことが繋がってくる。



「蕎麦嫌いのお兄さんって、佐原のことだったの?」

それで、佐原が度々話していた弟は三鶴くんだったということになる。



「……はい」

「私と佐原が同級生って知ってたのは最初から?」

「ち、違います。俺もそれはあとから知ったんです!」


三鶴くんの声が大きくなりかけたけれど、換気扇の音のおかげで佐原のお母さんには聞こえなかったようだ。私たちは声のボリュームに気をつけつつも話を続けた。



「佐原は……私と三鶴くんが同じバイト先だって知ってるの?」

「はい。でもそれもあとからです。色々と話してる内に合致する箇所があって、それで気づいたみたいです」


三鶴くんが佐原の弟だったと分かって、佐原が三鶴くんの兄だったと知ると、やっぱり目元の雰囲気はお互いに重なるところがある。


たまに、三鶴くんの空気感が佐原と似てるな、なんて思ったことが何回かあったけれど、まさか兄弟だったなんて……まだ信じられない。