二回目の佐原の家の中は、やっぱり佐原の匂いがした。
今日あんなことがあったなんて知らない佐原のお母さんは、リビングでテレビでも見ててと言って晩ごはんの支度をはじめた。
佐原はまだ帰ってきてないようで、ホッとする。
今日だって廊下で会わないように極力教室からは出なかったし、佐原のクラスの前は通らないようにしてた。
なのに、私は今は佐原の家にいて、佐原が毎日座っているであろうソファーに座ってる。
図々しいって思われる。なんだコイツって呆れられる。でも、楽しそうにキッチンに立ってる佐原のお母さんに『やっぱり帰ります』なんて、言えなかった。
付けたテレビは夕方のニュースがやっていた。
きっともう少し面白い番組がやってるかもしれないけど、テレビの内容はあまり頭に入ってこない。むしろ、佐原が帰ってきた時のことばかりを考えては焦ってる。
と、その時。換気扇の音に交ざって玄関のドアが開く音がした。
「ただいま」
きた、と思い、私はぎゅうっと姿勢をよくしてスカートの裾を握る。
ドクンドクンと鼓動が速くなる中で、ガチャリとリビングの扉が開く。そして……。
「え、あれ、岸さん……?」
帰ってきたのは、何故か同じバイトで働いてる三鶴くんだった。