それからなんとか1日を終えて、放課後になる頃には手の症状はだいぶ和らいでいた。
けれど、まだ違和感は残ったままだし力が入らないのは相変わらずで。今日はバイトがあるけれど、まともにお皿洗いができる状態じゃないし、万が一割ってしまったらお店に迷惑をかけてしまうと思い、今日は休ませてもらうことにした。
とぼとぼと地面に映る自分の影を見つめながら帰り道を歩いていると、優しく誰かに肩を叩かれた。
「やっぱり海月ちゃんだ」
それは、佐原のお母さんだった。
「……え、あ、こんにちは」
予想していなかった鉢合わせに困惑しつつも、私は小さく頭を下げる。
佐原のお母さんは買い物帰りなのかスーパーの袋を持っていた。
「海月ちゃんは学校帰り?」
「……はい」
「それにしても海月ちゃんは細いわね。ちゃんとご飯食べてるの?」
「そ、それなりに」
「それなりじゃダメよ。育ち盛りなんだから!」
佐原のお母さんはやっぱりとても気さくな人で、そのパワフルさに圧倒されてしまう。