「なんでそうやって関係ないとか言うんだよ。俺の気持ち、全然お前に伝わってないんだな。もうどうしたらいいかわかんねーよ」


胸がぎゅっとして痛い。

だけど、私だってどうしたらいいのか分からない。

振り向いて、身体がおかしいって言えばいいの?

本当のことを打ち明けたらいいの?

分からない。


私も分からないよ。




「……ごめん。今は私に近づかないで」


声を振り絞ってそう言うと、後ろから「分かった」という佐原の返事が聞こえた。




――『……なあ、俺って海月にひどいことしてる?』

いつか言われたことが耳の奥でこだましてる。



ひどいことをしてるのは、きっと私。受け入れたような素振りをして、こうして容赦なく遠ざける。


これで良かったと、言い聞かせて、これでいいわけないと否定してる自分もいて。

あっちに行ってと言ったのは私なのに、もう聞こえない佐原の足音に寂しくなってる。


身勝手で、不安定で、どうしようもない気持ちの置き場所も分からずに、今さら振り向いて誰もいない景色を見ながら……。



頬を伝う一筋の涙を北風がさらっていった。