結局、授業がはじまっても手の痺れがとれなくて、まともにシャーペンも握れなかった。

どうしようかと考えて、私はとりあえず追加の薬を服用することにした。本当は朝に飲んだばかりだから続けて飲むと胃が荒れたり副作用も強くなってしまう危険性があるけれど、このまま手が使えないよりはいい。


休み時間に食堂前の自販機へと向かい、手のひらを押し付けるようにミネラルウォーターのボタンを押した。


取り出し口に落ちてきたペットボトルを抱えるようにして持ったけれど、どんなに頑張ってもフタが開けられない。

ぎゅうと、ありったけの力で回すと、ペットボトルは私の腕から飛び出して地面の上に転がってしまった。


……はあ、と深いため息をついて、ぐしゃりと凹んだペットボトルを拾い上げるためにしゃがみこむ。

なんだか歪な形になったペットボトルが自分みたいで。こんなフタを開ける作業も出来ないのかと、絶望をとおり越して失笑してしまう。



と、その時。背後から足音が聞こえた。


ビクッと身体が反応したのは、それに聞き覚えがあったから。

私が覚えている足音なんてひとつしかない。



「どうした?」

佐原はしゃがみこんでる私に気づいた。