「はあ……疲れた」
体育もサボったし、授業だってほとんど机に顔を伏せていたというのに、最近は疲れやすくて困る。
制服がシワになることも気にしないでベッドに横になりながら、スマホの時計を確認した。
バイトまで、あと40分。
……今日は中途半端だな。本当はいつも学校帰りにそのまま向かうことが多いけれど、たまにこうして遅いシフトの時もあって、そういう時には制服から私服に着替えて行くことにしてる。
ああ、このまま横になってたらウトウトして寝てしまいそう。
ハッと気づくと、だいぶ時間が過ぎてしまっていて、私は慌ててバイトに行く準備をした。
急いでドアを開けて部屋を出ると、ちょうど階段を上ってきた美波と鉢合わせしてしまい、先に目を逸らしたのは私のほう。
「あんたさ、いつもドアの音うるさいんだけど。開け閉めするだけで響くんだから周りの迷惑も考えてよ」
たしかに今は少し乱暴に閉めてしまったことは認めるけど、美波が大音量で流してる音楽のほうがよっぽどうるさいし、毎晩私の部屋まで響いてくる。
「あと、教室で私のこと見るのもやめて。あんたとのことがバレたらどうしてくれんの?」
学校では決して見せない美波の苛立った表情。
美波は私が視界に入るだけで不快感をむき出しにする。
これでも居候として色々気遣ってるつもりだし、遠慮もしてる。でも突然一緒に暮らすことになって私以上に戸惑っていたのは美波だった。
同い年で性格も真逆で、どう考えても噛み合うことがない私たちは六年間ずっとこうしてギスギスしている。
「大丈夫だよ。私、春にはいなくなるから」
「は?なにそれどういう意味……ちょっと!」
私は美波の言葉を最後まで聞かずに一階へと下りて家を出た。