「なんで説明のところに海月の名前が書いてあんの?」

すると、周りにいた人にクスクスと笑われてしまい、俺は誤魔化すように咳払いをしながら海月の隣へと戻った。



「クラゲって漢字で書くと海月だから」

「まじで?初めて知った。だから好きなの?」


そう聞くと、海月はゆっくりと首を横に振る。



「……私、昔クラゲを飼ってたの。ホームセンターの海水魚コーナーに売ってた瓶に入れられたクラゲ」 

「へえ、小さいやつ?」


「うん。たぶん売るために瓶に入れてたと思うから、本当は大きな水槽に移してあげなきゃいけなかったんだろうけど、お母さんに内緒にしなきゃ捨てられると思ったから瓶のままで飼ってた」


海月はクラゲをなぞるようにして、指先を水槽へと付けた。



「初めて友達ができたみたいで嬉しかった。いつも寝る前にホームセンターで一緒に買ったクラゲの餌をあげてさ。赤い粉末。成分は知らないけど、透明な身体の中に入っていく赤色を私はいつも確認して、泳ぐ姿を飽きずに見てた。……でもある日、瓶の中にいたはずのクラゲがいなくなってたの」


「……もしかして、見つかって捨てられた?」 


「ううん、死んで溶けちゃった」
 

そう言いながら海月は遠い瞳をする。