「欲しいの?」


それは、子ども向けの商品ばかりが並ぶ店内には少し似合わないぐらい綺麗なネックレス。

満月のようなまん丸なガラスの中に、キラキラとした石の欠片が散らばっていて、二匹のクラゲが上下に向かって泳いでるデザインだった。



「見てるだけ」


海月は普段アクセサリーなんてしないけど、やっぱりこういうのを貰ったら嬉しいんだろうかと、さりげなく値段を確認してみる。



悲しいことに俺が想像してたよりも桁がひとつ多くて、財布の中身をかき集めても足りないぐらいの高価なものだった。



……絶対これ売る気ないだろ。でも、隣の指輪は買われてるっぽいし、明らかに大人をターゲットにした土産であることは間違いない。


クローゼットの奥に眠らせてあるへそくりを持ってくるべきだったと、俺が独り言を言っている間に海月は土産屋を出てしまった。



ネックレスは買えなかったけど本物は見ることができると、俺たちはクラゲがいる水槽へと向かう。


薄暗い通路の先には、ブルーライトに照らされた大きな水槽があった。中にはたくさんのクラゲが優雅に泳いでいて、みんなその美しさに何枚も写真を撮っていた。



「クラゲってもっと地味だと思ってたけど、綺麗なんだな」

「うん」


海月は一番見たいと言っていただけあって、かなり真剣にクラゲの姿を追っていた。



「写真、撮らないの?」

「撮るのは好きじゃない」

「ふーん」


俺はあとで沢木に見せてやろうと何枚か撮ったけどイマイチ上手くいかない。

もう少し後ろからと、下がったところでクラゲの説明文が目に入り「あ!」と、思わず響く声を出してしまった。