あのあと一通り水族館を周り、沢木が言っていた大きなカメやトンネルをくぐるカワウソも見たけれど、海月の反応が一番よかったのはヘビのようにくねくねしていたチンアナゴだった。
あれを見て可愛いと言った海月の感覚は分からないけど、俺が食べようとスプーンを入れてるチンアナゴパフェはたしかに可愛い。
ちなみに本物が刺さっているわけではなく、普通のパフェにチンアナゴの形をしたチョコレートがトッピングされている。
「疲れてないよ。なんか海月って面白れーなって思ってただけ」
「面白い?」
「うん。俺の計画にちっともはまってくれないところとか。新しい海月を知った気がして単純に嬉しいよ」
そう言うと、今度は海月の瞳が左右に動く。
「どっちがいい?白とオレンジ」
俺はチンアナゴのチョコレートを指さす。
「オレンジ」と答えた海月のパンケーキの皿にそれを乗せると、少しだけ嬉しそうに口角を上げてくれた気がした。