「……だったらヒトデがいい」

「え?」

「触れるって、あそこに書いてある」


海月はそう言って棘皮(きょくひ)動物と書かれたコーナーを指さした。名前からして嫌な予感しかしない。



小石が敷き詰められた高さの低い水槽の中には、背中がぞわりとしてしまうものがたくさんいた。


ヒトデにナマコにウニ。なにやらクモのように長い生き物もいて、俺はまだ近づけずにいる。そんな中で、海月はなんの躊躇いもなく水の中に手を入れて黄色いヒトデを持ち上げた。



「なんか、ザラザラしてる」


海月は猫の頭でも撫でているかのような手つきでヒトデのことも触っていた。



「触らないの?」


海月に言われて、俺はおそるおそる隣にしゃがむ。指でツンとすると、やっぱり気持ち悪くてなんていうか感触はゴム手袋に近い。


結局、俺は他の生き物も触れなかった。このままじゃ腰抜けだと思われると、「サメを見に行こう」と誘ったけど海月は上の空という感じ。そして……。


「無理無理無理っ、なんかいっぱいきた!」

次に俺はドクターフィッシュと書かれた水槽に手を入れていた。もちろん海月がやりたいと言ったからだ


さっき触れなかったこともあるし、小さな魚なら大丈夫だろと手を入れたのはいいけれど、数えきれないほどの魚たちが俺の手に群がっていた。