そして授業が終わり放課後。クラスメイトたちが「また明日ね」と笑顔で帰っていく中で、私は混んでいる時間を避けるためにあえてゆっくりと帰り支度をしていた。
すると、珍しくアラーム以外でスマホが振動していて、私は制服のポケットから取り出して確認する。
【これからカラオケ行くんだけど、どう?】
それは佐原からのメッセージ。
実はあのあと連絡先を聞かれて何度も断ったけれど、あまりのしつこさに思わず教えてしまったのだ。
しかも【ちゃんと登録した?】【電話とかかけていい時間ある?】【つーか数学ダルすぎ。そっちの授業はなに?】と、返事もしていないのにメッセージは次々と届く。
カラオケって、行くわけないでしょと、心で思いながら私はそのままスマホを閉まった。
そのまま昇降口に向かい校舎を出ると、冷たい風が顔の横を通りすぎていって、私は制服の袖を限界まで伸ばして手を隠す。
春夏秋冬の中で、私は冬が一番嫌いだ。
『これを持って晴江おばさんのところに行きなさい』
そう言われたのも冬だったから。
なのに、今年の冬は数十年振りの厳冬なんて言われていて、しかも雪まで降るかもしれないとニュースでやってた気がする。
そんなことを考えながら歩いたらいつもより早く家に着き、私は脱いだローファーを綺麗に揃えて部屋へと続く階段を上った。