正直、内心はすごく複雑だった。なにせ俺は今日の日のために水族館のことをかなりリサーチしていた。

あそこを見たい、ここから回りたいと海月から言われた時に戸惑わないようにリードするためだ。


頭の中で数々のパターンを想定して、海月とのデートを楽しみにしてたのにオッケーしてくれた理由がクラゲって……。


まあ、こうして一緒に出掛けられてるだけで贅沢なことなんだけど。



水族館は最寄り駅に着いてすぐの場所にあった。


白いタイルが続く道の先にはドーム型の建物があり、入り口付近には移動販売のワゴン車があり、イルカカステラという可愛らしいものまで売っている。

そんなメープルバターのいい匂いがする場所を横目に、俺たちはチケットを出して館内の中へと入った。




「けっこう混んでるな」

「うん」


予想はしてたけど、週末ということもありかなり人が多かった。


外観も綺麗になっててビックリしたけど、内装はもっと昔来た時の記憶とは重ならないぐらいリニューアルされていた。



「なにから見たい?」

「……うーん」



海月の性格からして、あれこれとリクエストしてくるタイプじゃないことは分かってる。だからこそ下調べをしてきた情報を発揮する時だ。



「あと少しでアザラシのエサやりが見れるらしいよ。運が良ければ体験もできるって」


女子は大抵アザラシが好き。むしろ水族館のメインといえばイルカかアザラシだろってくらい。