そして約束の週末。コーディネートには散々迷ったけど、トレーナーだけを新しく買ってあとはいつもどおりの服装になった。


沢木や他の友達と遊ぶ時の俺は必ず遅刻して時間どおりに着いたことがない。なのに俺は待ち合わせ時間の15分前に到着して、スマホを見ながら海月のことを駅前で待っていた。


……昨日は遠足前日の興奮感みたいなのがあって、なかなか寝られなかった。



「早いね」

「……わっ!」


突然、背後から声がしてダサいぐらい驚いてしまった。



振り向くと、そこには茶色いダッフルコートを着た海月がいた。学校では見られないボルドー色のロングスカートを履いて、黒いタイツのブーツ姿。


……やばい。めちゃくちゃ可愛い……って、そうじゃなくて。



「なんでそっちから来んの?家あっちじゃん」

だから俺は海月が歩いてくるであろう方角を見ていたのに。


「私も早く着いて、そこのコンビニにいた」

「え、いつから?」

「佐原と同じくらい」


……ん?なんか話が噛み合わない。



「俺と同じくらいに着いてたならなんですぐに来なかったんだよ?」

「……待ち合わせは待ち合わせ時間ぴったりに行くものなんじゃないかって思ったから」


海月がぼそりと言った。



俺の想像では、おそらくコンビニの中から俺を見ていたけれど、いつ行くべきかを考えての今だったのだろう。



「いいんだよ。早く着いたなら早く会っても」


というか、ひとりで待ってた姿を見られてたのは普通に恥ずかしい。でも、きっと海月はこういうこともしたことがないから分からなかったんだと思う。



「電車、すぐ来ると思うから行こう」

「うん」


俺たちはそのまま駅の中へと入った。