「海月はバイトだとどんな感じ?」

話を変えるように三鶴に聞いた。


弟のバイト先はなんとなくあそこだろうなと察しはついている。


でもさすがに蕎麦アレルギーの俺が蕎麦屋に行くなんて海月に会いに来ましたってバラしてるようなもんだし、偶然を装うにしても不自然すぎる。

そこまでしてしまったら最早ストーカーに近い気がするし、この前、海月を待ち伏せしてた時も自分怖いなって引いてたぐらいなのに。


でもあの時は本当に不安で、加減を忘れて手首を掴んでしまったこともそうだし、海月とちゃんと話さなければって気持ちでいっぱいだった。



そんな風に必死になったことは今まで一度もなかった気がする。




「岸さん?うーん、静かだよ。話しかけなければ自分から話さないし。でも仕事はできるから信頼されてる先輩って感じかな」

「いつからバイトしてんだろ」

「さあ、俺が面接受けた時にはすでにいたし、普通に考えて高校入学した春ぐらいじゃない。あともう少しで辞めちゃうけど」

「え?」

「年内までなんだって。理由は聞かないでよ。知らないから」



週末デートの約束はしても俺はまだまだ海月のことを知らない。

これからゆっくりって思ってるけど、やっぱり好きという気持ちを自覚してしまうと欲深くなってる自分もいる。



「バイトで男に言い寄られてない?」

「俺以外はみんなおじさんとおばさんばっかりだから、そういうのはないよ」


少し安心したけど油断はできない。海月の良さに気づくヤツなんてきっかけさえあればいくらでもいるから。