「なあ、気合いが入ってるようには見えないけど、センスあるなって思われる服ってどれだと思う?」
「え?なに?」
俺は学校から帰宅したあと、部屋のクローゼットから自分の持っている洋服をすべて引っ張り出してベッドの上に並べていた。
そんな乙女みたいな俺の行動を三鶴は怪しげにドアの前で見ている。というか、バイトが休みで直帰してきた弟を無理やり部屋に連行したのは俺だけど。
「なんでもいいんじゃない?っていうか、1、2着の服を着回してる俺にセンスを聞くの?」
「だよな……」
俺は腕を組ながら洋服を見てはさっきから唸っている。もちろん海月との水族館に行く時の洋服を選んでいるんだけど、これがなかなか難しい。
普段はスウェットか楽なTシャツしか着てないし、それでもそこそこモテてきたからお洒落とは無縁。
持っている洋服を見れば見るほど全部がダサく感じて、街に買い物にいってマネキンが着てる洋服を一式買ってきたほうが間違いないんじゃないかと思うほど。
「……兄ちゃんって、なんか変わったよね。前はもっとダメ人間だった気がする」
「おい」
「だってフラフラ今の時間から家を出て、化粧だけが濃い女の人と遊んで。だけど楽しそうじゃない顔をして帰ってくるって感じだった」
ゲームばっかりしてるくせに、三鶴はけっこう鋭い。
「今の兄ちゃん、楽しそうだよ」
そう言って洋服選びを手伝ってくれてる弟に、少し照れる。
弟も俺と同じで言いたいことは言うほうだけど、頭がいいぶん的を得たことを不意討ちで投げてくるから反応に困る。