俺はそれから授業中でも休み時間でもかなり浮かれていた。周りからどうしたの?って心配されるぐらい。
「……あ」
廊下で目が合ったのは他のクラスの女子。海月に嫌がらせをしていたヤツだ。女子は俺からスッと目を逸らして横を通りすぎていく。
俺に対して好意があったであろう女子はあれ以来、声をかけてこないし、俺と繋がりうる仲間とも遊ばなくなった。
俺がきっときつい言い方をしたからだと思う。
〝だってあの子が順番待ちしてる待ち合い室は……脳神経外科だもん〟
だけど友達関係がなくなったからと言って、あの言葉が消えたわけじゃない。
正直、疑問はまだ浮かんでる。
非常階段で海月が流し込むように飲んでいたものはサプリメントではなかったし、仮にそうだった場合、ポーチをなくした時に中身を確認されないでよかったと、あんな風にホッした表情をするはずがない。
『もう隠し事はない?』
けれど、海月は俺の目を見て『ないよ』と言った。
それを疑いたくはないし、海月がサプリメントだと言うのなら、俺の選択肢は信じる以外なにもない。
海月はツラい過去を話してくれた。
それは誰にでも話せることじゃないから、少なからず俺は海月の中で〝話してもいい人〟に変わってきているのだと思う。
だから、俺に話さないということは、なにもないということ。
俺は海月を信じてるから、なにかあるはずがないんだ。