「なんかめちゃくちゃ顔が緩んでるけど、ちゃんと岸さんに行くかどうか聞いてみろよ。断られる可能性もあるだろ」

「今、聞く」


俺はスマホで海月にメッセージを送った。

最初はシンプルに【チケット貰ったから水族館に行かない?】と文章を打ったけれど、【行かない】と返事がくる想像が簡単にできたので打ち直し。


俺はズル賢く【水族館のチケット貰ったんだけど、有効期限が今週末までらしい。他の人は都合がつかないっていうし、海月はどう?ここからそんなに遠くないし、暇潰しに行かない?】と、送り直した。



「返事きた?」 

「まだ」

「スタンプ押せ」



沢木の提案で、目を潤ませているキャラクターのスタンプを1回。普段はスタンプなんて使わないけど、少しでも海月が食いついてくれるように。

スマホが手の中で振動した。メッセージは海月。




【OK】

返事は文ではなく、スタンプだった。




「……よしっっ!!」

恥ずかしいぐらいガッツポーズをしてしまった俺を見て、クラスメイトたちがクスクスと笑っていた。



海月と水族館。

これはデートって呼んでいいんだろうか。調子に乗るなって言われそうだけど、俺はもうデートの気持ちでいく。



「で、岸さんのことまじなの?」


沢木は背中を押してくれていたかと思えば、まだ半信半疑だったらしい。

前の俺はそう聞かれても口を濁してた。曖昧でもいいと思ってた。でも今はこんなにもはっきりとした答えが出てる。



「まじだよ」


素直に認めると、沢木はなにも聞かずに「なら頑張れ」と応援してくれた。