「佐原のこと信じてないわけじゃないけど、絶対に私たちのことは誰にも言わないでね。美波に迷惑かけちゃうから」


私と違って美波にはまだ長い学校生活がある。私のせいで妨げたくはない。



「言わないよ。お前の過去のことも絶対に言わない。話してくれてありがとうな」


私は佐原の言葉に首を横に振った。自分のことを話せたことで少しだけ気持ちが軽くなった。

でも、本当に少しだけ。だってまだ私は……。



「秘密にしてたのは、これだけ?」


佐原が私の心を読んだように言った。




「もう隠し事はない?」



ドクンドクンと、再び心臓が速くなる。もしかしたら、タイミングはここかもしれない。



過去のことを打ち明けた流れで病気のことを話せば、時間も手間もない。

実は……って、深刻にはならずに、あのねって切り出して。いつもみたいに『でも大丈夫だから』って心配はさせない。


そんなシミュレーションが頭で出来上がっているのに、私から出た言葉は……。



「ないよ」


佐原の目をしっかりと見て答えた。