「……なんで」
佐原の家は反対方向だし、この道を使うはずがないのに。
「今日のことが気になって海月ともう一度話したいと思ったんだ。それでメッセージも送ったけど既読にならないし、このまま気まずくなるのは嫌だから前に別れた道で待ってれば通るんじゃないかって……。悪い。待ち伏せみたいなことして」
佐原はばつが悪そうな顔をしていた。
スマホを見なかった私も悪いし、佐原のことはずっと気になってた。でも今はそれ以上に……。
「でもビックリした。まさか岸と歩いてくるとは思わなかったから」
同じクラスとはいえ友達というわけではないし、学校では他人よりも他人を演じてる私たち。
そんな接点の欠片も見せない組み合わせのふたりが肩を並べて歩いていたら誰だっておかしいと思うはず。
「同じ名字だしなにかあるとは思ってたんだ。もしかしてふたりは……」
「ち、違うの、佐原くん。そこでたまたま鉢合わせになって、クラスのこととか授業のこととか少し話してただけで別に私たちは……」
いつも毅然とした態度をしてる美波が必死に弁解しようとしていた。
けれど、佐原の視線は一瞬たりとも美波に向くことはなく、私ことを見つめたまま。