佐原は私を受け入れてくれた。

私のことなんて同級生で影の薄いヤツとしか思ってなかっただろうけど、なにも聞かずに。


下手とか上手いとか、そんなのは分からない。テクニックがあるとかないとか、それも気持ち悪い。

でも、途中で、気づいた。


……あ、佐原は初めてだって。


戸惑いながら、どうしたらいいのか迷いながらも佐原は『大丈夫?』って何度も聞いてくれて、ひたすら優しかった。

そんな彼を利用してしまった自分がイヤで、申し訳なくて。できれば、なかったことにして欲しいと思っていた。




「忘れねーよ。つか、忘れられるか」
  

佐原は不機嫌に頭をガシガシ掻いた。



あの日を境にこうして私に話しかけてくれること。きっと気にかけてくれてるんだと思う。
  

でも、私は気にかけてほしくなんかない。

あんなのは一瞬の火遊びにでも思ってくれたら楽なのに。



「なあ、ひとつ聞きたいんだけど」

「……なに?」



「なんであの時、泣いてたの?」