気持ち悪い。


そんなことを期待した自分も。大嫌いな母を今も求めていると気づいてしまったこの気持ちも。


全部、ぜんぶ、気持ち悪い。




「おい、岸海月。ここの問題解いてみろ」


学校に着いて授業がはじまっても胸のモヤモヤが取れずに、私はずっと机に顔を伏せていた。



「聞いてるのか、岸!」


ああ、うるさい。私は膝の上にあるスマホをスクロールさせて、耳につけているイヤホンのボリュームを大きくした。



「おい!」


すると、痺れを切らせた数学の先生が私に近づいて、イヤホンを無理やり引っこ抜いた。

 

「授業中だぞ」


他の人たちだって隠れてスマホいじってるし、音楽だって聴いてるし、寝てる人だっているのに私だけ標的にされる。

いつもなら面倒ごとにならないように「……すいません」と謝る私だけど、今日の私は虫の居所が悪い。


ギロリと反抗的な目付きをすると、「なんだ、その態度は」と先生の逆鱗に触れてしまった。



「やる気がないなら教室から出ていけっ!!」


教室中に響き渡るぐらい大きな声で怒鳴られ、私はそのまま戻らないつもりでカバンを手に取り廊下に向かった。



「岸さん、どうしたの?怖くない?」
「キャラ変?」
「ぷっ、そうかも」



クラスメイトたちのひそひそ声にも鋭い視線を向けて、私はバンッ!と教室のドアを乱暴に閉めた。