……ガラッ。
ドアを開けると、海月は黒板を背に教壇の上に座っていた。
第三音楽室は弦楽器や管楽器、打楽器などの置き場所になっていて授業で使われることはない。
「ここ、幽霊が出るらしいよ」
だから授業をサボる部屋として最適でも生徒たちはあまり近づかない。
「ポーチは?」
俺の話を虚しいぐらい海月は無視。「ん」と、先ほど預かったものを渡すと海月は小さな声で呟いた。
「……中身、見た?」
その瞳は怯えているようにも見えた。
「見てない。拾ったヤツも見てないって」
あえてカバンを漁られた時に抜き取られたということは伏せておいた。知ったところで気分がいいものでもないし、また嫌な気持ちにさせる必要はないと思ったから。
海月は俺の言葉を聞いてホッとした表情をしていた。よほど中身を確認されたくなかったようだ。
「……なあ、俺って海月にひどいことしてる?」
「え?」
頭で考えるよりも先に、そんなことを聞いていた。