「いつも青白い顔してるし、絶対ヤバい病気だと思う」

「決めつけんなよ」

「だって脳神経外科なんて普通は受診しない……」

「黙れ!!」

女子を一喝した声は辺りに響き渡った。


憶測で決めつけていいことと悪いことがある。

いくら海月のことが気に食わないからってヤバい病気だと言うこいつの頭のほうがヤバい。


「もういい。ポーチは渡しておくからお前は教室に戻れ」

これ以上話していたら本気でキレてしまいそうだ。


「悠真。あの子のことは好きにならないほうがいいよ。いくらこんなこと言ったって悠真は私のことなんてもう信じないだろうけど、いつか後悔すると思う。……忠告はしたからね」


女子はそう言ったあと、階段下の死角から廊下へと出ていった。


俺は荒ぶった気持ちを落ち着かせるようにして、壁に寄りかかる。


【ポーチ預かってる】 

返事は返ってこないかもしれないけど、海月にメッセージを送った。


〝脳神経外科〟

消えては浮かんでくる単語に苛立ちながらも、手の中にあるスマホはすぐにピロンと鳴った。


【今、第三音楽室にいる。すぐ取りにいく。どこ?】
   

たぶん海月はメッセージが届いた瞬間に表示される画面で内容を読んでいる。だから返す必要がないものは既読にならずにそのまま無視する。でも返事がきたということは、ポーチを早く返してほしいのだろう。



【俺がいく。待ってて】


授業がはじまるチャイムも気にせずに、俺は海月がいる第三音楽室へと向かった。