「な、中身はもちろん見てないからね」

「当たり前だろ」

そう言ってポーチを受け取った。


紛失したことは当然海月はすぐに気づいただろうし、言わないだけですごく困っているかもしれない。

とりあえずメッセージだけでも送っておこうとスマホをポケットから取り出したところで、女子から制服を掴まれた。  


「私、悠真に嫌われたくない……っ」

たぶんあれ以来、嫌がらせはしてないみたいだから、自分なりに反省したんだと思う。でも俺は……。


「嫌ってない。でもああいうことを影でしてるヤツと遊ぶ気もないから」

突き放すような言い方をすると、女子はすぐに瞳を潤ませた。


「悠真はあの子のことが好きなの?」

「………」


なんでみんなすぐに結論付けようとするんだろうか。


たしかに海月のことは少し気になる人から、どうしようもなく気になる人に変わって、今はたぶん、それ以上。

でも気持ちを認めてしまったら、もっと突っ走ってしまう気がしてる。
 

「あ、あの子、絶対なんか変だと思う」

「は?」 

ギロリと睨むと、女子は言いづらそうに口を開いた。


「……私、その、生理不順で毎月薬もらいにいってるの。変な誤解されたくないから知り合いに会わないように隣町まで。そこ、産婦人科とか内科とか外科とか色々入ってる大きな大学病院なんだけど、たまにいるよ、あの子」

「だからなに?病院ぐらい行くだろ。風邪とかで」


「違うよ。だってあの子が順番待ちしてる待ち合い室は……脳神経外科だもん」
  

……ドクン、と心臓が大きく動揺する。