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「もうすぐ文化祭ね。料理部もなにか出展しましょうか」

 このところ菓子先輩はうきうきしている。文化祭の準備が学校中で始まったからだ。お祭りがあると浮かれ出すなんて、まったく菓子先輩は予想を裏切らない。

「たった二人でですか? ちょっと無理があるんじゃ」

「あら、二人じゃないわ。御厨さんと柚木さんも、いつも遊びに来るお礼に手伝いますって言ってくれたわ。だから四人よ」

「いつの間に……」

「そういえばこむぎちゃんのクラスは何をやるの?」

「飲食店の抽選に外れたので、映画館になりました。映画のDVDを流しているだけの、簡単なお仕事です」

 歩き疲れた先生や保護者の憩いの場になること間違いなし。椅子は埋まっているのにいまいち盛り上がらない教室の姿が今から目に浮かぶ。

「菓子先輩のクラスは?」

「うちはお化け屋敷よ。脱出ゲーム風にすることになって、みんなはりきっているわ~」

 桃園高校の文化祭は毎年レベルが高い。飲食店やお化け屋敷ひとつとっても意趣やテーマが凝らされており、クオリティは大学にひけをとらないのではないか。
 進学校生が勉強のストレスと、男子のいないことで持て余された情熱のありったけをぶつけるからだ、と私は思っている。サボる男子がいなくて統率が取りやすいというのもあるかもしれない。つまり文化祭は私たち桃園高校生の魂の叫びなのである。