詠斗は実家で両親と三人暮らし。今から向かうのは実家からほど近い六階建てマンションの四階。新婚夫婦の愛の巣だ。

 一応自分からも母親に連絡を入れ、直接目的地のマンションへと向かうことにした。できることなら、あの男より先にそこへ到着しておきたい。

 最寄り駅に到着し、歩くこと約十分。マンションのエントランスホールをくぐり、オートロック式の自動ドアの前で『405』とその部屋の番号のボタンをプッシュする。『呼出』ボタンを押すとインターホンの音が鳴るのだが、本当に鳴っているのかどうか詠斗にはわからない。

 すぐに応答してもらえ、自動ドアがひとりでに開く。さっと通り抜け、エレベーターを使って四階へ。降りて少し右手のほうへ歩いていくと、目的の部屋の前で女性がひとり立っていて、にこやかに出迎えてくれた。

「いらっしゃい、久しぶりね」

 吉澤穂乃果。詠斗にとって、義理の姉にあたる人物である。