そう言われても、詠斗にとってピンとくる名前ではなかった。これが紗友なら「あぁ、松村先輩ね」なんて軽く言ってのけるのだろうが、生憎人付き合いは詠斗のもっとも避けて通りたい分野である。同級生ならまだしも、一学年上の女子生徒のことなど知る由もない。
「要するに、真犯人が見つかれば彼女への疑いが晴れるわけだ。で、あなたの真の望みはそれである、と」
『その通りです。良かった、あなたのような頭の良い方に出会えて。嬉しいです』
これまたにっこりと笑いかけられているようで、なんとも言えない気持ちになる。詠斗は少し乱暴に頭を掻いた。
『当初の予定では、あなたを通じて警察の方に働きかけてもらうつもりでしたけれど、これほど理解力のある方なら、あなた自身の手で事件を解決できてしまいそうですね?』
「バカなことを言わないでくださいよ! ただの高校生にそんなことできるわけないでしょ?!」
『ただの、ではありません。【幽霊の声が聴こえる高校生】です』
「どっちでも同じことですって!」
それを言うなら耳が聴こえない時点で普通の高校生ではないとも言えてしまうわけだが、これ以上膨らませると収拾がつかなくなりそうなので口にはしないでおいた。おそらくドヤ顔をしているであろう美由紀の顔に泥を塗るのも悪い。
「要するに、真犯人が見つかれば彼女への疑いが晴れるわけだ。で、あなたの真の望みはそれである、と」
『その通りです。良かった、あなたのような頭の良い方に出会えて。嬉しいです』
これまたにっこりと笑いかけられているようで、なんとも言えない気持ちになる。詠斗は少し乱暴に頭を掻いた。
『当初の予定では、あなたを通じて警察の方に働きかけてもらうつもりでしたけれど、これほど理解力のある方なら、あなた自身の手で事件を解決できてしまいそうですね?』
「バカなことを言わないでくださいよ! ただの高校生にそんなことできるわけないでしょ?!」
『ただの、ではありません。【幽霊の声が聴こえる高校生】です』
「どっちでも同じことですって!」
それを言うなら耳が聴こえない時点で普通の高校生ではないとも言えてしまうわけだが、これ以上膨らませると収拾がつかなくなりそうなので口にはしないでおいた。おそらくドヤ顔をしているであろう美由紀の顔に泥を塗るのも悪い。