あぁ、そうか。
 怖いんだ。

 先輩の声が聴こえなくなることが怖いんだ。

「…………っ」

 あの時もそうだった。
 いつも聴こえてきていた声が不意に途絶えた屋上で、とてつもない恐怖を覚えた。

「…………ぁ」

 それでも、口にしてはいけないと思っていた。

 怖いとか、悲しいとか、そういう言葉を口にすることは許されないのだと。

 ただでさえ他人に心配をかける存在なのだから、余計な気遣いをさせちゃいけない。

 自分の足で立って、歩いて、普通の生活ができている姿を見せていなくちゃいけないって、そう思っていた。