「……見てもらったほうが早いかも」
『はい?』
「先輩」

 そう言って、詠斗は真剣な眼差しでまっすぐ前を見つめた。

「一度会ってみてもらえませんか? 神宮司隆裕に」

 少し間を置いてから、『なるほど』と返ってきた。

『いわゆる、面通しというやつですか』

「そうです。たとえ一瞬の出来事だったとしても、もし本当に神宮司が犯人だったら思い出せるんじゃないかと思って。顔じゃなくていい、背格好や雰囲気だけでも」

『……えぇ、そうですね。確かに顔をはっきり見たわけじゃありませんが、本人か別人かくらいは見分けられるかもしれません』

「決まりですね。じゃあ放課後にここへ連れてきますから」

『わかりました、お待ちしています』

 これで神宮司隆裕が美由紀殺しの犯人だと断定できれば、あとは仲田翼殺害時のアリバイを崩すことで二つの事件が一気に解決する。アリバイ崩しのほうは専門家である警察に任せればいい。

 いよいよ核心に近づいた気がして、詠斗の弁当を食べるスピードがはやる気持ちに比例していた。