「んまい。この卵焼き、母ちゃんのよりうまい」

「それ聞いたら女将さんがっかりするから言うなよ」

「女将さんの卵焼きも私は好きだよ」


私達は定食屋さんでテーブルを囲み、それぞれが頼んだ料理を口に運んでいた。

ヒロはまた「いつもの」と頼み【味噌カツ煮定食】を。

私は今回【鶏肉と野菜たっぷりの黒酢あん定食】を選んで、八雲君は【お子様定食】を頼んだ。

ちなみにお子様用といっても和食中心になっていて、おにぎりとエビフライに唐揚げ、卵焼きとお味噌汁という定番だけど割としっかりしたラインナップだ。

八雲君が卵焼きを美味しそうに頬張るのを見ていたら、ヒロが「自由研究は何にするんだ?」と聞いてきて、私は八雲君と二人で玉響物語の紙芝居を作るのだと説明した。


「玉響物語って、御霊還りの社が舞台の神話だろ?」

「うん。オレが新しい結末を作ることにした」


おにぎりをかじった八雲君に、ヒロは「オリジナルか。いいな」と口にする。


「俺も、あの結末は好きじゃない」

「そうなの?」

「あの神さまは自分勝手に人の娘の命を繋ぎ止めて自分が死ぬ時になると今度は娘の命を道連れにしてるだろ」