「でも、八雲君、こんなに絵が上手なんだし、いっそ絵をメインにして作るのはどうかな?」

「絵を?」

「さすがに本格的な絵本を作るのは大変だろうから、例えば……紙芝居で紹介、とか」


思いついたままに提案すると、八雲君は少し悩んで。


「紙芝居はやりたい。けど、魚の紙芝居はなんか嫌かも」

「えっと……それなら、どんなのがいい?」

「もっと絵本みたいな物語がいい」


そう言われて、でもすぐには思い浮かばなくて。

それならと、私は「図書館で何か探してみようか」と誘ってみた。

突然過ぎたかなと口にしてから不安になったけど、八雲君は困った様子もなく快諾してくれ、善は急げと女将さんに出かける許可を貰いに部屋を飛び出した。

そして、五分も経たないうちに戻ってきた彼は、すでにダウンジャケットとイヤーマフを装着していて、私は急かされるようにして二人でみなか屋を出発したのだった。