うちは家族の中にアレルギーを持ってる人はいなかったけど、祖母が動物が苦手だったので親とはぐれたらしき子猫を見つけた時、八雲君と同じようにこっそり餌を持っていってたっけ。
その子猫は誰かに拾われたのか数日後にはいなくなっていて、良かったと安心しながらも寂しかったのを思い出す。
名前なんてつけたら愛着が湧いて、いつかいなくなった時に八雲君は私以上に寂しい思いをするのかもしれないな、なんて考えていたら。
「お姉さんの家で、この猫飼える?」
八雲君が、期待を滲ませた瞳で私を見つめた。
「あ……えっと、ごめんね。私の家、この島じゃなくて凄く遠いところにあるんだ。それに、住んでるところアパートだから動物禁止なの……」
飼えない理由を並べているうちに、八雲君の表情が落胆に染まっていく。
申し訳なく思い、もう一度ごめんねと謝ると、彼は力なく首を横に振った。
そして、子猫がソーセージを食べたのを見届けると、すくっと立ち上がる。
「……そろそろ戻らないと、母ちゃんに怪しまれるから」
「そっか。それなら、私も一緒に戻ろうかな。私と一緒にいれば、お話してたのかもって女将さんも思うだろうし」
八雲君に続いて立ち上がると、彼は一度唇を引き結ぶようにしてから。
「あり、がと」
恥ずかしそうに、微笑んでくれた。