せっかく絞り出した勇気は、相手に届くことなく露と消えてしまうのか。

もう一度言ってとお願いされても多分無理だなと、半ば落胆しながら顔をあげたら。


「──え?」


不思議そうな顔でもしているだろうと予想していたナギは、頬を染めて困ったようにはにかんでいた。


「お前、そういうとこも変わってないよな」

「え? え?」

「大切なこととか、俺が欲しいと思う言葉を、どんなに時間がかかってもちゃんと伝えてくれる」


優しい声色で言うと、息を吐き出しながらナギは再び草の上に寝転んだ。

まさか、ナギが私の言葉で照れるなんて。

予想もしてなかったけれど、見たことのない表情を引き出せたのをひっそりと喜んでいたら、少し厚めの雲に太陽が隠れたせいか、さっきよりも冷たい風が吹き抜けて。

冬桜が柔らかくその身をしならせると、まるで降り始めの雪のように花びらがそっと舞った。

今日の天気予報は一日中晴れ。

ホワイトクリスマスにはならないだろうと、朝のニュース番組で言っていたのを思い出す。

そこで、ふと、ナギはクリスマスを一緒に過ごす約束をしている人はいないのかと気になった。