女将さんが真っ白なシーツを手にとったのを見て、私は息を吸い込むと窓を閉め階下へと降りた。

玄関で靴を履いて、鉢植えや花壇が並ぶ庭へと小走りで入る。

ヒロが私に気づいて、彼のその視線を辿り、男の子も何事かと目を丸くして。

シーツを物干し竿にかけた女将さんが振り返った。


「あら凛ちゃん、どうしたの?」


ドクドクと心臓が跳ねる中、私は緊張で乾き始めた唇を開く。


「あの、女将さんの腰が」


思っていたよりも小さい声になってしまったけれど、女将さんの耳には届いていたようで。


「私の腰?」


彼女は両手で自分の腰に手を当てた。


「上から見てて、もしかして痛いのかなって、思って」


一気に言葉を繋げられず、考えながら少しずつ伝えると、女将さんは理解して両手のひらをパンと合わせる。


「ああ! そうなの、最近腰痛がね、ひどくなってきてて。サポーターが手放せないのよ」


歳とるって嫌ねぇなんてケラケラ笑う女将さん。

その明るい雰囲気に少し緊張がほぐれた私はようやく目的を口にできる。


「良ければ、手伝ってもいいですか?」


すると、女将さんは瞬きをした。