お腹がいっぱいになり箸を置くと、私は長い息を吐き出した。
満腹感からもあるけれど、ナギのことが頭から離れないからだ。
結局、自転車を回収しに比良坂神社に戻ってみたものの、ナギの姿はどこにもなかった。
鳥居を潜り、階段の先にある境内も見て回ったけれど、そこに人の気配はなく、木漏れ日に照らされる本堂が静かに佇むのみで。
もしかしてと寄ってみた社務所にも鍵がかかっていて入れなかった。
せめてお礼くらい言いたかったし、できればナギの連絡先も聞きたかった。
でも、ナギも用事があって急いでいたのかもしれない。
明日また、あの冬桜の咲く場所にいってみよう。
もしかしたら会えるかもと期待し、私はまだ手をつけていなかったデザートの抹茶ケーキにフォークを刺したのだった。