四十代後半くらいの駐在員さんも出てきて、良かった良かったと笑顔を見せる。


「女将さんのお子さんだったんですね」


見つかって良かったと胸を撫で下ろしながら、息子を抱き締めるみなか屋の女将さんに声をかけると、そこで初めて私に気づいたようで。


「凛ちゃんが見つけてくれたの? もう、この子は迷惑かけて!」


ダメだろう、なんて叱っているけど、心配で仕方なかったと言わんばかりに抱き締めたままの女将さん。

母親の愛情を一身に受けているたつ君を、少し羨ましく思う。


「凛ちゃん、本当にありがとうね」


感情に溢れた声で感謝されて、私は「いえ」と小さく首を横に振った。


「私だけじゃなくて彼も」


と、ナギを振り返ったのだけど。


「彼?」


女将さんが不思議に思うのも無理はない。

ナギは、いつの間にかいなくなっていたのだ。


「あ、あの、ここまで私たちを友人が案内してくれたんですけど」


交番はあそこだと言われ、そこから私は入れ替わるようにナギより先を歩いた。

もしかして、案内が終わったからと帰ってしまったのだろうか。


「そうなの? 帰ったのかしらねえ」

「そう、なんでしょうか」


今朝も、似たような感じだった。

いきなり現れて、気づくといなくて。