あれかな。

ついて行って大丈夫かとか、この人誰だろうみたいに考えてるのかも。

それなら変に不安にさせては可哀想だと、私は話しかけてみることにする。


「お名前は?」


交番に預けるにしても、名前が言えるなら早めにご両親に会えるだろうとも思い尋ねてみれば、男の子は鼻水をすすりながら「たちゅ」と零す。


「たちゅ……? たつ君?」


確かめると、男の子はこくんと頷いた。


「たつ君、苗字はわかるかな?」


再び問いかけると、苗字の意味がわからないのか唇を尖らせて首を振る。


「えっとね、上のお名前のことなんだけど、ちょっと難しいかな」


早くお家に帰してあげたくて、フルネームで知れたらなと願った矢先。


「凛、交番はあれだ」


ナギの指差した方向に、赤いランプが目印の交番が見えた。

正確には駐在所と表記されている。

引き戸の入り口は開いていて、ということは中に駐在員さんがいるのではと近づくと、中からひょっこりと知った顔が出てきて。


「たつ! あんたどこにいたの!」

「ママァーーー!」


無事、再会となった。