宮司さん夫婦。

ナギのお祖父さんとお祖母さんの可能性を考えて、私はペダルを漕ぎながら落ち着かない気持ちになる。

もしも、そうであるなら。


「……ナギは、身寄りがいなくなっちゃうんじゃ……」


声に出してその寂しい響きに、心臓が切なく痛む。

そうでなければいいと願いつつ辿り着いた比良坂神社。

白い鳥居の横に比良坂神社と記された門柱があり、どこに自転車を停めたらいいだろうと自転車から降りた時。


「っく……かあ、……ん」


すすり泣く小さな子の声がして、私はあたりを見回した。

すると、門柱の影に隠れるように三歳くらいの男の子が膝を抱えて泣いているのが見えて。


「どうしたの?」


自転車を端に寄せて停めてから、男の子の傍にしゃがみこむ。

私の声に男の子は弾かれたように顔を上げ、涙で濡れた頬を見せた。

人が来たことに安心したのか、男の子は大泣きして大粒の涙を流す。


「だ、大丈夫? お母さんは?」

「かあ、しゃん、おうち」

「お家か。えっと、お家の場所はわかるかな?」

「わ、わか、わかんな、いいぃ!」

「わっ! ご、ごめんねっ。そうだよね! わかってたら帰ってるもんね」


うっかりバカな質問をしてしまった!

宥めてみても男の子の号泣は止まらず、私はもう反省してもう一度ごめんねと謝った。