太陽が僅かに東から西へと傾きを変えた頃、私はヒロから借りた自転車に跨って、地元の人しか通らないような住宅街を走っていた。
最初に跨った時、サドルが高くてヒロの足の長さを羨ましく思ったのは記憶に新しい。
そして、そんな足の長いヒロがこっそりと私の定食分まで支払ってくれていたのも記憶に新しく、頭が上がらない思いだ。
島にいる間に何かお礼をできればと思考を巡らせつつ向かっているのは、定食屋さんから一番近い比良坂(ひらさか)神社。
出発前にスマホで地図を調べていた際、私を見ない顔だと気にして話しかけてくれた定食屋のおばさんの話では、比良坂神社はとても古い時代からあるのだそう。
昔は参拝者も多く、それなりに賑わっていたらしいけれど、近代になり、周りの神社仏閣が参拝者を意識した作りになっていき、近くにお土産屋さんや休憩所等を設置した為に、皆そちらに参拝するようになったと話してくれた。
それでも、地元の人の中には毎日参拝している人もいるのだとか。
けれど、最近になって宮司さん夫婦が亡くなった為、比良坂神社はどうなっていくのかしらとおばさんが零していた。